硬く、重い空気が漂う美術館。
展示室では多くの人が、この日の主役を待っています。

現われたのは前野健太さん。
その音楽はもちろん、「トーキョードリフター」という映画で主演もつとめ、注目を集めているミュージシャンです。

カメラのシャッター音とともに、静かに、ゆっくりと始まったライブ。

「写真を見ながら聴いてください」
「どうぞ好きなように歩いてまわって」

前野さんの言葉に促されて、会場にいる人々の視線が動きます。
ただただ生々しく日常を綴る前野さんの歌と、人と街の姿を写し出した荒木経惟さんの写真が、重なり合い、絡み合って作り出す混沌とした世界。

そして、その頂点で、一気に吐き出される前野さんの絶唱。

身動きもできないような圧倒的なライブに、会場にいた誰もが、特別な時を過したと感じたに違いありません。

強い感動に包まれた美術館の夜でした。



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