奥沢〜玉川田園調布〜自由が丘の地域にゆかりのある人物を講師にお招きし、毎回多彩なテーマでお届けする講演会「人ひろば」。本日の講師は作家の中川李枝子さんです。著書『いやいやえん』、『ぐりとぐら』や、アニメ映画『となりのトトロ』のオープニング曲『さんぽ』の歌詞など、その作品はあまりに有名です。
中川さんは1935年生まれ。東京都立高等保母学院卒業後すぐに、駒沢公園敷地内のみどり保育園の主任保母に就任。「儲からないなら楽しまないと」と思ったそうです。子ども達を喜ばせたい、とお話を作る日々の中で『いやいやえん』は生まれました。明るくのびのびした語り口に、思わず笑みがこぼれます。
とにかく学校と友達、本が大好き。そんな子ども心に一番いやだったのは、戦争で母親の顔が暗くなっていくことだった、とご自身が80歳になってから気づいたそうです。「戦争中は、学校の教室が安心できる場所で、担任の先生が教室を歩いて回りながら、生徒みんなの頭や背中に触れて、スキンシップをとりながら本を読んで下さったのが一番好きな時間だった。」
中学校の図書室で、岩波少年文庫『ふたりのロッテ』に出会い、その面白さに夢中に。そうして岩波少年文庫を全巻買ってもらい夢中で読んだことが、この道に入る大きなきっかけとなりました。後に、その編集に携わっていた、いぬいとみこさんにお手紙を出し、いぬいさんの同人誌に参加。岩波書店の石井桃子さんの編集で『いやいやえん』を発表することとなりました。
1F講座室前では、中川さんの著書『子どもはみんな問題児。』(新潮社)、『いやいやえん』、『ももいろのきりん』(福音館書店)の販売が行われ、講演会後は中川さんによるサイン会となりました。子どもの頃に中川さんの作品を読んで育った方をはじめ、参加された皆さんの感慨もひとしお。大きな時間の流れたひとときでした。



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